Article

コロナウイルス:mRNAワクチンにより誘発される抗体に対するSARS-CoV-2 B.1.1.7変異株の感受性

Nature 593, 7857 doi: 10.1038/s41586-021-03412-7

世界の多くの地域で重症急性呼吸器症候群ウイルス2(SARS-CoV-2)の伝播は制御不能な状態にあり、一部の地域ではB.1.1.7変異株(現在では94か国で感染が報告されている)の高い伝播能が制御を難しくしている。B.1.1.7変異株に見られる変異によって、流行当初のウイルス株をベースとして開発されたSARS-CoV-2ワクチンに対するウイルスの応答が変わるのかどうかはまだ不明である。今回我々は、mRNAワクチンBNT162b2既接種者の免疫応答を評価した。我々は、野生型スパイクタンパク質もしくはB.1.1.7変異株に見られる8つのアミノ酸変化を含む変異型スパイクタンパク質を発現しているシュードウイルスを使って、初回および2回目のワクチン接種後の中和抗体応答を測定した。その結果、ワクチン既接種者由来の血清は、野生型シュードウイルスに対して幅広い中和抗体力価を示したが、B.1.1.7変異株に対する中和抗体力価は、程度は大きくないものの低下が見られた。こうした低下は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復した複数の患者の血清でも明らかであった。B.1.1.7変異株に対する中和能の低下は、N末端ドメインを標的とするモノクローナル抗体(10種の内9種)でも、また受容体結合モチーフを標的とするモノクローナル抗体(31種の内5種)でも見られたが、受容体結合ドメインの受容体結合モチーフ以外の部分を認識するモノクローナル抗体では見られなかった。新たに出現した懸念される変異株(VOC 202102/02)を模倣するために、B.1.1.7を基盤にさらにE484K置換をコードする変異を導入したところ、B.1.1.7の持つ変異だけによる中和活性低下に比べて、ワクチン接種により誘発された抗体やモノクローナル抗体(31種の内19種)による中和活性がより大幅に低下した。B.1.1.7変異株にE484K置換が出現したことは、BNT162b2ワクチンの効果に対する脅威になるだろう。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度