Nature ハイライト

古生物学:小惑星衝突地点での生命の急速な回復

Nature 558, 7709

白亜紀末の大量絶滅を引き起こした小惑星の衝突後、チクシュルーブ衝突クレーター内にはわずか数年でプランクトンが戻ってきていた。
白亜紀末の大量絶滅を引き起こした小惑星の衝突後、チクシュルーブ衝突クレーター内にはわずか数年でプランクトンが戻ってきていた。 | 拡大する

Credit: John Maisano and University of Texas

約6600万年前に起こった白亜紀末の大量絶滅では、非鳥類恐竜類、翼竜類、大型海生爬虫類、アンモナイト類など、地球上の全生物種の実に4分の3が絶滅した。この絶滅事象は、メキシコ湾南部のユカタン炭酸塩プラットフォームに小惑星が衝突して引き起こされたもので、この衝突によってチクシュルーブ衝突クレーター(現在は海底に埋もれている)が形成された。一次生産力が衝突前のレベルまで回復するには30万年を要したが、果たして衝突地点の状況はどうだったのか。衝突地点に近いほど回復に時間がかかったのではないかという説もあるが、C Loweryたちは今回、クレーター内部では衝突から数年以内に生命が戻っていたことを明らかにしている。チクシュルーブ衝突クレーターには、衝突からわずか3万年後に生産力の高い豊かな生態系が存在していた可能性があり、これは年代が白亜紀/古第三紀境界付近と推定される他の多くの地域での回復時間よりもはるかに早い。この結果は、クレーターとの近さが回復に対する重大な制御要因ではなかったことを示している。

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