Nature ハイライト

構造生物学:マラリアのタンパク質を積み荷として宿主細胞内に運び込むトランスロコン

Nature 561, 7721

マラリア発症の主要な特徴の1つは、プラスモジウム属(Plasmodium)のマラリア原虫による宿主の赤血球(RBC)のリモデリングである。マラリア原虫はRBC中の寄生体胞内部に住み着き、専用の分子装置を使って大量のエフェクタータンパク質をRBCの細胞質へと運び込む。この役割を果たすのが、1.2 MDaを超える膜タンパク質複合体であるPTEX(Plasmodium translocon of exported proteins)である。このトランスロコンはマラリア原虫の毒性に必須で、そのため抗マラリア薬の重要な標的候補と見なされているが、複合体が集合し機能する際の分子機構はほとんど分かっておらず、複合体に関する構造情報もなかった。今回H Zhouたちは、CRISPR–Cas9によって改変されたエピトープ標識を使って、EXP2とPTEX150、HSP101からなる内在性PTEXコア複合体を熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)から単離し、内在する積み荷の移動を行っている状態の複合体と、次の輸送用にリセットされた状態にある複合体の構造をクライオ(極低温)電子顕微鏡法により決定した。この研究は、熱帯熱マラリア原虫エフェクタータンパク質の搬出機構についての重要な知見を明らかにしており、この独特なトランスロコンを標的とする抗マラリア薬を構造に基づいて設計するための情報が得られそうだ。

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