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150 years of Nature anniversary articles

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感染症:感染症のモバイルヘルス接続型診断の運用

モバイルヘルス(「mHealth」)とは、モバイル機器、それらの構成要素および関連技術を医療分野に応用したもので、これによって患者はすでに治療や助言を得やすくなってきている。mHealthは、インターネットに接続した診断機器との併用により、感染症の診断、追跡、管理において、また医療制度の効率を高めるための、新たな方法をもたらしている。今回我々は、これらの技術の展望を検討するとともに、患者の検査の受けやすさの改善や治療支援に加え、公衆衛生機関が感染症の集団発生の監視、対応策の実施、介入の影響評価を世界規模で行う能力の向上において、そうした技術が持つ可能性を実現させる上での課題の数々について考察する。

原文:Nature (2019-02-27) | doi: 10.1038/s41586-019-0956-2 | Taking connected mobile-health diagnostics of infectious diseases to the field

ナノスケールデバイス:材料のファンデルワールス集積

エピタキシャル成長などの材料集積戦略は、強い化学結合が関与していることが多く、一般的に厳密に構造が一致し加工処理の適合性がある材料に制限される。ファンデルワールス集積は、事前に作製した構成要素を弱いファンデルワールス相互作用で物理的に集合させるもので、二次元ファンデルワールスヘテロ構造に例示されるように、格子や加工処理に制限のない化学結合不要の代替的集積戦略をもたらす。今回我々は、この新しい方法の進展、課題、機会について概説し、二次元の枠を超えて多様な材料系を自在に集積するためにこの方法を一般化し、既存材料の範囲を超える人工ヘテロ構造や超格子を創出する可能性を論じる。

原文:Nature (2019-03-20) | doi: 10.1038/s41586-019-1013-x | Van der Waals integration before and beyond two-dimensional materials

天文学:重力波の新領域

アインシュタインによる一般相対性理論の発表からほぼ1世紀後の2015年、加速している物質によって時空に重力波が生成されるという、この理論で最も重要な予測の1つが、重力波の直接検出によって立証された。それ以来、重力波天文学によって、重力の性質やブラックホールの特性についての検証が可能になり、2017年には2つの中性子星の合体による重力波の生成が電磁気学的に観測され、マルチメッセンジャー天文学に関心が集まるようになった。本総説では、重力波天文学の歴史と成果を概説し、将来を展望する。

原文:Nature (2019-04-24) | doi: 10.1038/s41586-019-1129-z | The new frontier of gravitational waves

計算機科学:機械の行動

人工知能で動作する機械が、社会的、文化的、経済的、政治的な相互作用の仲立ちをすることが多くなっている。人工知能システムの振る舞いの制御、恩恵の享受、害の最小化を可能にするには、そうしたシステムの行動を理解することが不可欠である。今回我々は、人工知能システムの行動の理解には、コンピューター科学領域を取り込んで発展させ、科学全体から得た知見を盛り込んだ、機械の行動を調べるための幅広い科学研究計画が必要であると主張する。我々は、まずこの新しい分野の基盤となる一連の「問い」について概説し、次に機械行動研究に対する技術的、法的、制度的な制約を検討する。

原文:Nature (2019-04-24) | doi: 10.1038/s41586-019-1138-y | Machine behaviour

化学合成:有機合成のデジタル化

有機化学はその多くが、具体的な目標や仮説の研究向けの助成金を受けた研究機関の研究室によって、特定の目的に特化した方法で進められてきた。現代の合成方法によってかなり複雑な分子が得られるが、単一の化学反応の結果を予測することは、まだ大きな課題である。効率、品質、収率などの基準を指針として最適な合成順序を選択する賢明な意思決定を可能にするには、化学反応式の「矢印の上」に記された反応条件の予測を改善する必要がある。情報を交換しデータを共有する方法は、従来のやり方から、コンピューターで読み取れる形式かつ開かれた協調体制へと進化する必要がある。こうした進化はイノベーションを加速するが、データの処理、キュレーション、基準を標準化した「ケミストリー・コモンズ」を創設する必要がある。

原文:Nature (2019-06-12) | doi: 10.1038/s41586-019-1288-y | The digitization of organic synthesis

健康科学:加齢研究における発見から健康に老いるための治療法まで

過去数十年にわたり、寿命を制限する過程や加齢を理解することは、生物学における難題だった。30年前、多細胞のモデル生物の寿命を延長させる遺伝子バリアントが見つかったことで、加齢の生物学は前例のない科学的信頼を得た。今回我々は、この輝かしい科学的成果のいくつかの重要な節目について概説し、加齢に関わるさまざまな経路と過程について考察するとともに、加齢研究が、独特な医学的、商業的、社会的な意味を持つ新たな時代に足を踏み入れたと提唱する。この時代は、加齢研究だけでなく、ヒトの健康寿命に影響するあらゆる生物学研究において変曲点となると我々は考える。

原文:Nature (2019-07-10) | doi: 10.1038/s41586-019-1365-2 | From discoveries in ageing research to therapeutics for healthy ageing

Nature ダイジェスト Vol. 16 No. 10

DOI: 10.1038/ndigest.2019.191026