2016年8月号Volume 13 Number 8

ヒト胚の体外培養で最長記録達成

新しい培養法の開発により、受精後13日間、培養皿でヒト胚発生が観察された。この成果は不妊治療の助けになると期待されるだけでなく、ヒトの初期発生が人類にとっていまだに謎の多い事象であることを改めて認識させるものとなった。ヒト固有の特徴がいくつも見つかり、未知の細胞群も観察されたのである。これに伴い、ヒト胚培養における国際的な規則改正にも議論が及んでいる。これまでの最長記録は9日間で、ヒト胚体外培養を14日以内と定めた規則を超えることは「技術的にない」と考えられてきたが、今回の報告はそれを超えたばかりか、さらなる研究の必要性を示したからだ。

Editorial

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News

人類の親友であるイヌは、東アジアと西ユーラシアで、それぞれ別のオオカミ集団から家畜化された可能性がある。

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ハンガリーの研究所で原子核の放射性崩壊の異常が観測され、理論物理学者らは5番目の新たな力の存在を示している可能性があると分析した。

ヒト胚を受精後13日目まで培養できる方法が編み出された。この手法を用いて、ヒトの初期発生を知るための手掛かりが得られそうだ。

異常なミトコンドリアが子に受け継がれないようにする置換法は、期待外れの結果に終わるかもしれない。核移植時に持ち込まれた少量の異常ミトコンドリアが増えてしまう場合があるようなのだ。

近年、南イタリアではオリーブの細菌性病害が大きな問題になっているが、その封じ込め計画は地元の猛反発を受けて頓挫していた。このほど封じ込め計画を妥当とする裁判所の判決が出て対策が進むことが期待されるが、病害が地中海沿岸諸国に拡散するリスクは依然として高い。

放射性セシウムの盗難を懸念し、生物医学研究で広く用いられているセシウムγ線照射装置をX線照射装置へと切り替える検討が各国で進む中、研究者たちは、研究結果に影響を与えかねないと憂慮する。

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News Feature

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本誌が実施したアンケート調査により、科学界を揺るがす「再現性の危機」について、科学者自身はどのように見ていて、どうすれば再現性を向上させられると考えているかが明らかになった。

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Japanese Author

がんゲノムの研究における第一人者、小川誠司教授は、血液がんをはじめ、さまざまながんの仕組みを解き明かしてきた。今回、片岡圭亮特定助教とともに行ったがん症例の大規模解析により、がんが免疫から逃れる仕組みの1つを解明した。この知見を利用すれば、免疫チェックポイント阻害剤の効果が予測できるのではないかと考えられ、注目を集めている。

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News & Views

有尾類は優れた器官再生能力を持ち、例えば四肢を切除されても元通りに再生することができる。メキシコサンショウウオを用いた研究から、こうした肢再生では、2種類のシグナル伝達分子が互いに協力し合いながら複雑な再生過程を調節していることが分かった。

年老いた星が多数を占める銀河には、星の材料になるガスがあるのに星が作られないものが多い。銀河の中心にあるブラックホールが銀河の中のガスをかき回し、星形成を抑え込んでいるとみられることが観測から分かった。

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News Scan

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